Tokyo Roji
東京路地


Tokyo Roji: The Diversity and Versatility of Alleys in a City in Transition


Book Abstract

The Japanese urban alleyway, which was once part of people’s personal spatial sphere and everyday life has been transformed by diverse and competing interests. Marginalised through the emergence of new forms of housing and public spaces, re-appropriated by different fields, and re-invented by the contemporary urban design discourse, the social meaning attached to the roji is being re-interpreted by individuals, subcultures and new social movements. The book will introduce and discuss examples of urban practices which take place within the dynamic urban landscape of contemporary Tokyo to portray the life cycle of an urban form being rediscovered, commodified and lost as physical space.

かつて人々のプライベートな空間であり日常生活の場であったが、利害や競争社会によって姿を変えつつある日本の都会の裏通り“路地”にまつわる物語である。新しいタイプの住宅、パブリックスペース、再区画、現代的都市住宅構想による再開発によって置き去りにされた路地の持つ社会的意義が、人々、サブカルチャー、 新しい社会運動によって雑多で複合的なコンセプトとライフスタイルに沿った新解釈がなされている。そういった変化が起こす潜在的可能性を調査し、現代の東京の活力ある都市部で起こる実例をあげて論議し、商業化により失われた物理的空間と再発見された都市のライフサイクルを描写する。東京の路地裏は、かつて庶民の日常生活の場であったが、複雑な利害関係によって次第にその姿を変えていった。住居や公共空間の新しい形態の出現によって押しやられ、従来とは異なる用地として再配置され、現代のアーバンデザイン・ディスコースによって再創生され、いまや路地に付された社会的意義は、個人の思惑や、サブカルチャー、新しい社会運動などによってさまざまに再解釈されている。本書では、現代 東京のダイナミックな都市景観のなかで行われる都市の慣行例を紹介・考察し、物理的な空間 として再び見いだされ、商品化されて、失われるという都市形態のライフサイクルを描き出している。

Reviews

Heide Imai evokes the subtle complexity of Tokyo’s traditional back streets in a way that resonates with all cities struggling to be simultaneously local, global, and modern. This book is tremendously useful for shaping a deeper understanding of, and better tools for, historic preservation and community planning in Asia and throughout the world.

Sharon Zukin, author, Naked City: The Death and Life of Authentic Urban Places

By emphasizing on the importance of the sense of place and the ordinariness, this book takes the readers to the roji of contemporary Tokyo. Using multiple insightful urban narratives, Heide Imai skillfully unfolds the various facets of neighbourhoods of these hidden urban spaces.

Davisi Boontharm, International Program of Architecture and Urban Design, Meiji University, Japan

レビュー

東京の小道 今井ハイデが読者を存続が危ぶまれる街の散歩へ誘う控えめな街
東京を一度も訪れたことがない人が想像している「東京」と異なり、本来の東京は超高層ビルが立ち並ぶ大きな通りからなる大都市の側面だけではない。それどころか、木や植物が並ぶ小さな家と狭い通りからなる控えめな街であり、そこでは全てが人間のサイズで、ご近所さんと決してお互いの家の敷居は跨がないとしても、日に何度となく顔を合わせ、お互いが顔見知りである。ときには狭すぎて二人の大人が行きかうこともできないこれらの狭い小道には、「路地」という独特の呼び名がある。今井ハイデは、本書「東京の路地」において、長い間、中世の面影を残す人気のない街の象徴と考えられてきた「路地」を研究対象とした。路地は今日、超高層ビルが林立する東京の新たな流行となっている。若者はそのエリアの適度な家賃を好み、観光客はその「典型的な」雰囲気を楽しむ。今後、路地を残すには何が必要か?路地はもろすぎる。路地を活気づけた住人や店主はビルへと移り、店を閉じる。路地を形成していた昔の日本の社会構造ももはや存在しない。

神楽坂
今井ハイデは、根津、谷中、そしてとりわけ神楽坂という、路地の雰囲気をもっとも色濃く残す東京の地域にフォーカスする。職人や商売人、フランスからの駐在員が日曜日やランチタイムに中央通りを行きかい、いくつもの大学に近く、頻繁に開催される地元イベントにより活気づく。これらの地域は、1920年代以来変わらずその面影を保つ。しかし神楽坂でさえ今、危機にある。東京都は通りを広げようとしている。開発業者はまわりにマンションを建て、近隣と調和した路地という有機体を破壊する。例を挙げよう。壮麗な赤城神社は、建築家隈研吾によりとてもすばらしいリノベーションを遂げたが、この神社の敷地の一部は不動産プロジェクトにより資金援助を受けた。この古い街への比較的豊かな層(独身女性が多い)の流入は近隣の社会力学を変容させた。不動産開発業者と長くやりあってきた近隣の商業組合は高齢化し、負けを認め、戦いをやめた。神楽坂が他の近隣と同じようになるには時間の問題だ。「路地の将来についての問題は次のようなことです。路地はなくなってほしくないし、江戸時代のディズニーランドのようにもなってほしくない。」今井ハイデはまとめる。解決できない問題だ。

Regis Arnaud, CCIFJ Tokyo http://m.ccifj.or.jp/jp/article/n/64009/6400